口には様々な働きがあります。その中でも「食べる」「話す」というのは特に重要だと言えます。食べるという行為は栄養摂取の基本ですし、話すという事もコミュニケーションに大きくかかわってきます。人が社会の中で健康な生活を営む為には口の役割が非常に重要だという事が分かります。

口腔機能のうち、食べる事において重要なのが「咀嚼(かみ砕く)」「嚥下(飲み込む)」でしょう。咀嚼機能は咬合力には歯の数が影響します。成人の歯は全部で32本、親知らずを除くと28本ですが、多くの人は年を重ねるうちに虫歯や歯周病などによって減っていきます。数十年前は、歯が1本もなくて総入歯にしている高齢者は珍しくありませんでした。

日本の高齢化の問題が重要性を増していた1989年、厚生省と日本歯科医師会は、「80歳で自分の歯を20本以上保とう」という「8020運動」を始動しました。20本という数は、それ以上歯があれば食べるという行為において不都合がほとんどないとされていた為でした。当時は7%にしか過ぎなかった達成率は、2017年6月になると51.2%となり、初めて半数を上回ったのです。いまや高齢でも自分の歯が20本以上ある事は当たり前となりつつあります。

では、自分の歯が20本以上あれば万全という事なのでしょうか。歯周病でグラグラになった歯ではしっかり噛めないので、食事内容が制限されます。また、奥歯を噛みしめられないとつまずいた時踏ん張れないので、寝たきりの原因となる転倒や骨折のリスクは1.5倍にもなります。歯の数だけでなく、その歯がしっかりと機能しているかどうかは、全身状態や生活の質に関わる重要なポイントだと言えるでしょう。グラグラする自分の歯より、ぴったり合った入歯の方がよい事もあります。

機能する歯が20本以上あったとしても、まだ不十分だと言えます。唇・舌・口の周囲の筋肉などを複雑に動かす事で、食べる・話すという行為が成り立っているのです。これらもまた、加齢と共にスムーズに動いてくれなくなっていきます。すると、食べこぼしが増えたり、滑舌が低下したりなど、ほんのちょっと口の機能が低下した状態になります。これを「オーラルフレイル」と言います。歯を失う人が多かった時代は、「歯を残す事」がポイントでした。そこから次のフェーズへと移り、現代は「口腔機能の維持」が求められています。キーワードは「オーラルフレイル」です。

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